Jabberwocky in Japanese

Language Hat posted links to some translations of Jabberwocky, which has been a pet interest of mine ever since I saw the French and German translations in GEB. Someone, years ago, sent me a bunch of Japanese translations of Jabberwocky, and they’ve been languishing on my hard drive ever since. Now seems like a good time to get them out there.

I am posting these with minimal formatting because I’m lazy. Headings are translator names. Notes and credits are as I received them. See after the jump.

Sumiko Ishikawa

         ジャバーウオッキ

日かしぎ  かしぎの時
ぬめやかな錐角獣はその螺旋角もて丘腹をえぐる
日時計の下に巣喰う珍獣どち泣鳴して右往左往す
山嵐鳥  鮫口豚は錐角獣の錐揉の音を聞き
塒の危きを知り  恐れ戦慄く

伜よ  ジャバーウオッキにゆめ気を許すな
その爪はむずと把み  その顎はよく人を一呑みにす
ジャブジャブ鳥に眼を炯らせよ
恐れる飛竜を避けて通れ

若者は島人の宿敵を求めて
壮途につき——
タムタムの木蔭に身を寄せ
しばし想いに耽る

想いは馳せる「撃ちてしやまむ」
折りしも鬱蒼たる森を震撼させて
求めし敵は眼を爛々と輝かせ
唸を発して現われぬ  憎くき怪物ござんなれ

えいやあ  えいやあ  白刃は踊り
丁々発止  しとめたぞ
勝者は怪物の首をあげ
足どり軽く凱旋す

宿敵をしとめてきたとな  伜
でかしたぞ  あっぱれじゃ
佳い哉  生きてこの日に逢う
老いたる父は肩ゆすり  かんらかんらと笑いぬ

日かしぎ  かしぎの時
ぬめやかな錐角獣はその螺旋角もて丘腹をえぐる
日時計の下に巣喰う珍獣どち泣鳴して右往左往す
山嵐鳥  鮫口豚は錐角獣の錐揉の音を聞き
塒の危きを知り  恐れ戦慄く
Notes

読み方(原書はルビで):

錐角獣
トーヴ
山嵐鳥
ホロゴヴ 【注:「ボロゴヴ」ではない】
鮫口豚
ラース
鬱蒼
うつそう
憎くき
につくき
Credits
  • 石川澄子(いしかわ・すみこ)訳
  • ルイス・キャロル著、石川澄子訳『鏡の国のアリス』八紘印刷出版局 1982å¹´ 20-22 頁 「ルイス・キャロル生誕百五十年記念出版」

Tadataka Okada

 ジャバ−ウォックものがたり

あぶりの時にト−ヴしならか
まはるかの中に環動穿孔、
すべて哀弱ぼろ鳥のむれ
やからのラ−スぞ咆囀したる。

「ジャバ−ウォックにゆだんすな、子よ!
かみつくあごや、ひっかける爪!
ジャブジャブ鳥に目をくばりつつ
バンダ−スナッチの怒りを避けよ!」

剣を手に取り長の年月、
狂乱すごき敵をば求め——
ぽんぽんの木のかたえに休み
しばしは立って思いに沈む。

思いせわしくたたずむときに
ジャバ−ウォックは目を火と燃やし
厚い森ぬけ、ふうふううなり
飛んで来ながら、ぶくぶくという!

いちに! いちに! ぐっさりぐさり
きばもするどく切りこむ刃!
死体は捨てて首だけ取って
意気ようようと走ってもどる。

「ジャバ−ウォックを殺して来たか?
いざ、この腕に、ほおえむわが子!
よいかな、この日! キャルウ! キャレイ!」
歓喜のあまりかんらと笑う。

あぶりの時にト−ヴしならか
まはるかの中に環動穿孔、
すべて哀弱ぼろ鳥のむれ
やからのラ−スぞ咆囀したる。
Notes

読み方(原書は振り仮名で)

ç’°å‹•ç©¿å­”
かんどうせんこう
哀弱 
あいじゃく
咆囀 
ほうてん
爪
つめ
剣
けん
é•·
なが
年月
としつき
ç‹‚ä¹±
きょうらん
刃
やいば
Credits
  • 岡田忠軒(おかだ・ただたか)訳
  • ルイス・キャロル著、岡田忠軒訳『鏡の国のアリス』角川書店(角川文庫)1959年、16-18頁(本書は1947年ごろ訳され、1959年に角川文庫に加えられた。)

Taro Kitamura

     ジャバウォッキ

夕ぐらだよ、ぬめらかなトーヴ、
  ぐるぐらなける、ずどり、
よわじめな、ボロゴーヴ、
  みどぶーやから、きっきーな。

「むすこよ、ジャバウォックに、気をつけろ!
  あごはかむ、つめはつかむぞ!
ジャブジャブ鳥にも、注意、
  うるっこいバンダスナッチ、よけろ!」

むすこは、くるりる剣をとり、
  まがくった敵さがし、長い旅、
タムタムの木に、休んで、
  しばらく、考えこんでいた。

はげしい思いで、立ってると、
  ジャバウォック、目燃やし、
たらりの森を、ひゅーっと、
  ひゅるひゅると、かけぬけた。

一、二!  一、二!  くるりる剣、
  ぐさっ、ぐさっ、突きとおす!
ころしたそいつの、首だけ持って、
  むすこ、勝ちほこりあげてきた。

「ジャバウォック、ころした、だと?
  きららむすこ、よくやったぞ!
すらてきな日だ!  やらっほい!」
  父親はよろこび、のどをぐゎるぐゎる。

夕ぐらだよ、ぬめらかなトーヴ、
  ぐるぐらなける、ずどり、
よわじめな、ボロゴーヴ
  みどぶーやから、きっきーな。
Credits
  • 北村太郎(きたむら・たろう)訳
  • ルイス・キャロル作、北村太郎訳『鏡の国のアリス』王国社 1990å¹´ 31-34頁

Hajime Seriu

    ジャバウォック ものがたり

そはあぶときなり  ぬらなやかなる
  トーブらじゃいりぬ  まひろきりして
もろじめなるもの  みなボロゴーブぞ
      やはなれラースら  ほしゃみえずる

「子よ  ゆだんすな  ジャバウォックに
  そはあごもて噛み  爪もてひきさく
心せよ  心せよ  ジャブジャブ鳥と
      かの  いかりけぶる  バンダスナッチに」

手にきよらめく  つるぎをばとり
  もとめてひさしき  ひとのうの敵——
かれ  タムタムの  木かげにたたずみ
      しばしいこいて  おもいにしずみぬ

あららすおもいの  胸やきしとき
  目を火ともやす  ジャバウォックが
なぶやえずりつつ  風まきおこし
      ふかつき森より  あらわれいでぬ

はっし!  また  はっし!  ひとつ  また  ひとつ
  きよらめくやいば  受けよと切りこむ
はねたる首をば  こわきにかかえ
      かれ  いきまかけり  そぎて帰りぬ

「討ちきたりしか  ジャバウォックを
  来よ  わが腕に  きんらめく子よ
やんれぬるかな  よろぐわしの日ぞ」
      かれ  よろこびに  わらがいいびきぬ

そはあぶときなり  ぬらなやかなる
  トーブらじゃいりぬ  まひろきりして
もろじめなるもの  みなボロゴーブぞ
      やはなれラースら  ほしゃみえずる
Notes

読み方(原書はルビで):

噛み
かみ
爪
つめ
ジャブジャブ鳥
ジャブジャブどり
敵
てき
木かげ
こかげ
胸
むね
受けよ
うけよ
討ちきたり
うちきたり
来よ
こよ
è…•
うで
Credits
  • 芹生一(せりう・はじめ)訳
  • ルイス・キャロル作、芹生一訳『鏡の国のアリス』偕成社(偕成社文庫) 1980年(47刷 1992年)37-40頁
  • 芹生一の本名は島原健三。

Kokichi Shono

           ジャバウォッキー

  ときしもぶりにく、しねばいトーブが、
    くるくるじゃいれば、もながをきりれば、
  すっぺらじめな、ポロドンキン、
    ちからのピギミイふんだべく。

「心せ、むすこ、ジャバウォックに!
    かむあご、かくつめ、心せよ!
  ジャブジャブ鳥に気をつけい、
    するしいクチナバ、よけるがいいぞ!」

  むすこはひるめくつるぎをさげ、
    マンクスのかたきさがして長の旅、
  タムタムの木のほとりで休み、
    しばらく思いにふけっていた。

  あらぶる心で立ってると、
    おりしもジャバウォックほのおの目で、
  ふるふるたるじい森を、ひゅう、ひゅう、
    さざやきうなって通ってきた!

  おいち、にい!  おいち、にい!  これでもか、
    ひるめくつるぎが、ぐっす、ぶす!
  ばらしたジャバウォックの首をさげ、
    むすこはかちだく帰った。

「ほんとか、おまえ、ジャバウォックやったか?
    きたれ、かいなに、日のみこ、あこよ!
  はなばらしい日だ、キャルー!  キャレー!」
    父はよろこびむせんでおらんだ。

  もう、ぶりにくのころなので、もながの芝をきりります、
    しねばいトーブがじゃいります。
  よりつどう、すっぺらじめなポロドンキン、
    ちからのピギミイふんだべく。
Notes

読み方(原書は振り仮名で):

é•·
なが
芝
しば
Credits
  • 生野幸吉(しょうの・こうきち)訳
  • ルイス・キャロル作、生野幸吉訳『鏡の国のアリス』福音館書店 1972年(第12刷、1979年)、18-22頁

Hiroshi Takayama

        ジャバウォッキー

ゆうまだきにぞ  ぬめぬらとおぶ
  にひろのちにや  ころかしきりる
うたてこばれたるぼろこおぶ
  えかりたるらあすぞひせぶる

「蛇馬魚鬼に気を付けよ、吾子!
  噛みつく顎、掴みくる爪!
邪武邪舞の鳥に気を付け、
  たけりまく蛮鴕支那魑に近寄るな!」

こお栄える抜身さげ
  まんとうがましき仇求めてぞ久しく——
おぽろぼろんの木の辺にいこい、
  しばし思いにふけりてありぬ

して、あららく思いて立ち上るや、
  かの蛇馬魚鬼、灼々たる眼して、
たるじき森ぬちよりぞひょうひょうと
  ものすさまじくも仏滅りにけり

やっとう!  やっとう!  ぐさりやぐさり
  こお栄える鋭刃たのもし!
かく仇ほふるや、その首もて
  宝ぶらしく帰り来たり

「やよ、かの蛇馬魚鬼ほふりたるや。
  我が腕に来よ、おもてらす御身!
やよ  はねばねしき日かな!  軽う!  華麗!
  ががとばかりにゑみいびく

ゆうまだきにぞ  ぬめぬらとおぶ
  にひろのちにや  ころかしきりる
うたてこばれたるぼろこおぶ
  えかりたるらあすぞひせぶる
Notes

読み方(原書は振り仮名で):

吾子
あこ
é¡Ž
あぎと
掴みくる
つかみくる
蛮鴕支那魑
蛮鴕支那ち
こお栄える
こおばえる
仇
あた
辺
へ
灼々
しゃくしゃく
眼
まなこ
仏滅り
仏めり
鋭刃
とじん
è…•
かいな
Credits
  • 高山宏(たかやま・ひろし)訳
  • ルイス・キャロル著、マーチン・ガードナー註釈、高山宏訳『鏡の国のアリス』東京図書1980å¹´ 27-35頁 (Martin Gardner ç·¨ *The Annotated Alice* の後半の和訳)

Ichiro Takasugi

ジャバウォッキ−

ゆうげするとき ト−ヴしならか
まはるかに くるるきりさし
やせがなし よごれじき鳥
さまかるラース ほえむすぶ

「わが子よ ジャバウォックに心ゆるすな!
 かみつき ひっかき ところきらわず
ジャブジャブ鳥に心をくばれ
 バンダ−スナッチの怒りをさけよ!」

するどき剣を手にせる息子は
 敵をもとめていく春秋
タムタムの木の片方に息み
 しばし足をとどめて想いにしずむ
 
あらあらしく心たけりてありし折しも
 らんらんと目をかがやかせるジャバウォック
深き森よりかけいでつ
 そのうなり声のすさまじき
 
一度二度! 二度一度! するどき剣を
 骨まで通れとつきさして
敵うちとりし息子は
 その首ひっさげて意気揚々とかえりきぬ
 
「汝 ジャバウォックをうちとりしか?
 栄えあるわが子よ わが腕にきたれ!
めでたき日よ あな うれし」
 よろこびのあまり 父は叫びぬ
 
ゆうげするとき ト−ヴしならか
まはるかに くるるきりさし
やせがなし よごれじき鳥
さまかるラース ほえむすぶ
Notes

読み方(原書は振り仮名で)

剣
つるぎ
敵
かたき
片方
かたえ
息み
やすみ
  • 想い おもい
  • 意気揚々
    いきようよう
    汝
    なんじ
    栄え
    はえ

    註:「ほえむすぶ」の代りに、第六章に「ほえむせぶ」と記されている。

    Credits
    • 高杉一郎(たかすぎ・いちろう)訳
    • キャロル著、高杉一郎訳『鏡の国のアリス』講談社(講談社文庫)1988年、32-34頁

    Kozo Tada

         ジャバウォッキのうた
    
    あぶりのときぞ  トーヴぬらやか
    まはるかのなかを  ぐわりきりさす、
    すべてほそれな  ぼろとりのむれ、
    やからのあぶた  ほえずりにけり。
    
    「ジャバウォックに気をつけよ、吾子!
    かみつくあごに、ひっかくつめ!
    ジャブジャブ鳥に気をつけて
    バンダスナッチの怒りをさけよ!」
    
    ぎらつく剣を  手にひさしくも、
    たずねもとめし仇敵ぞこれ——
    ぽんぽん木のかたえに憩い、
    しばし思いにたたずみにけり。
    
    とがる思いにたたずみおれば、
    ジャバウォックは燃ゆるまなこに、
    ふかき森ぬけ身もかろやかに、
    飛びくるうちもぶるるとうなる!
    
    一、二!  一、二!  ぐさりやぐさり
    骨も通れと鋭刃きりこむ!
    死体はあとに首だけ取って
    意気揚々とかけもどる。
    
    「ジャバウォックのいのち取りしや?
    いざわが腕に、ほおえむわが子!
    よきかなこの日!  キャルウ!  キャレイ!」
    よろこびあふれてふっふと笑う。
    
    あぶりのときぞ  トーヴぬらやか
    まはるかのなかを  ぐわりきりさす、
    すべてほそれな  ぼろとりのむれ、
    やからのあぶた  ほえずりにけり。
    
    Notes

    読み方(原書はルビで):

    吾子
    あこ
    仇敵
    きゅうてき
    木
    ぼく
    憩い
    いこい
    鋭刃
    とじん

    註:原書の第一段には「トーヴ」と「ぼろとりのむれ」の代りに「トーブ」と「ぼろ
    とりのなれ」と記載されている。最終段だけでなく、逆さに字が出るところも第
    六章にも「トーヴ」と「ぼろとりのむれ」とあるので、第一段の二ヵ所は単なる
    誤植とこちらで判断した上で、直した。

    Credits
    • 多田幸蔵(ただ・こうぞう)訳
    • ルイス・キャロル著、多田幸蔵訳『鏡の国のアリス』旺文社(旺文社文庫)1975年初版、1986年重版、25-26頁

    Yasunari Takahashi

            ジャバーウォックの歌
    
    そはゆうとろどき ぬらやかなるトーヴたち
    まんまにて  ぐるてんしつつ ぎりねんす
    げにも  よわれなる  ボロームのむれ
    うなくさめくは えをなれたるラースか
    
    「わが子よ、ジャバーウォックに油断するなかれ!
    食らいつくその顎、かきむしるその爪!
    ジャブジャブ鳥にも心許すな、
    おどろしきバンダースナッチにはゆめ近寄るべからず!」
    
    けしにぐの剣、手に取りて、
    かれ、ひとごろしき敵をば求め歩くこと久しかりしが——
    タムタムの樹のかたえにて一息つき、
    しばし立ちつくして思いに沈みぬ。
    
    られられしき思いその胸に駆けめぐるときもとき、
    見よ、らんらんたる眼燃やしたるジャバーウォック、
    おぐらてしき森の奥より、飄飄と風切り飛びきたり、
    ぶーぶくぶくとうなやきけり。
    
    いち、に! いち、に! ぐっさりぐさり、
    目にも止まらぬけしにぐの剣、手練の早業!
    横たわりたる死体より刎ねたる首をば小脇にかかえ、
    たからからからと帰り来たりぬ。
    
    「なんと、なんじ、ジャバーウォックを討ちとったとな?
    さても、かんがやかしきわが息子よ、この腕に来たれ!
    おお、よろころばしき日よ! カルー! カレー!」
    親爺どの、心おどりていびき笑いけり。
    
    そはゆうとろどき ぬらやかなるトーヴたち
    まんまにてぐるてんしつつ ぎりねんす
    げにも  よわれなるボロームのむれ
    うなくさめくは えをなれたるラースか
    
    Notes

    読み方(原書はルビで):

    眼
    まなこ
    飄飄
    ひょうひょう
    刎ねたる
    はねたる
    Credits
    • 高橋康也(たかはし・やすなり)訳
    • 高橋康也・沢崎順之助訳『原典対照 ルイス・キャロル詩集・不思議の国の言葉たち』 筑摩書房(ちくま文庫)1989å¹´ 234-236頁(「この作品は一九七七年十二月一五日、筑摩書房より刊行したものを改訂、増補した。」)
    • 他にも、高橋康也著『ノンセンス大全』(晶文社 1977年)の中に掲載されているが、そこでは「飄飄」の代りに「ひょうひょう」と記されている他は、以上と全く同じ。

    Naoki Yanase

             ジャバウォッキー
    
    あぶりぐれきたりて  ぬらたかなるとなげら
      前後普角に転し錐しけり
    いともかよわれなりしはぼろぐろげら
      えでたるとんじらほしゃずりけり
    
    「邪歯羽尾ッ駆にゃ気をつけるんだぞ、わが息子!
      牙むき出して噛みつくぞ、爪むき出して襲いくるぞ!
    邪舞邪舞鳥にゃ気をつけるんだぞ、それからよいな
      たけむりくるう蛮駄栖那ッ致にゃ近づくな!」
    
    息子はまきれもなぎな剣を手に
      蕩島たる敵をながらく尋ぬ——
    かくて憩いたるはボロロン樹の蔭
      しばし佇みて思いに沈みぬ
    
    そしてむかっぽい思いに沈みつつ佇むとき
      かの邪歯羽尾ッ駆、燃ゆる眼輝かせ
    ぐらぎ森中よりじゃぞじゃぞっと現れ
      そして罵ぶりに罵ぶりたり!
    
    えいッ、おーッ!  えいッ、おーッ!  ぐさり、またぐさり
      まきれもなぎな刃の切れ味まぎれなし!
    屍打棄り、その首かかえ
      息子は意気ぱかぱかと家にぞ帰りし
    
    「するとおまえが邪歯羽尾ッ駆を退治したとな?
      でかしたぞ、輝みらしきわが息子!
    ああ、天晴なるぞ!  まごとじゃぞ!  めごとじゃぞ!」
      ねごとく笑う歓喜のその声
    
    あぶりぐれきたりて  ぬらたかなるとなげら
      前後普角に転し錐しけり
    いともかよわれなりしはぼろぐろげら
      えでたるとんじらほしゃずりけり
    
    Notes

    読み方(原書はルビで):

    前後普角
    ぜんごふかく
    転し
    てんし
    錐
    きり
    邪歯羽尾ッ駆
    ジャバウオック
    噛みつく
    かみつく
    邪舞邪舞鳥
    ジャブジャブ鳥
    蛮駄栖那ッ致
    バンダスナッチ
    剣
    けん
    蕩島
    とうとう
    尋ぬ
    たずぬ
    憩い
    いこい
    佇みて
    たたずみて
    眼
    まなこ
    ç½µ
    ば
    刃
    やいば
    屍打棄り
    しかばねうつちやり
    輝み
    かがみ
    天晴
    てんぱれ
    Credits
    • 柳瀬尚紀(やなせ・なおき)訳
    • ルイス・キャロル著、柳瀬尚紀訳『鏡の国のアリス』筑摩書房(ちくま文庫)1988å¹´29-32頁 (「この作品はちくま書庫のために新しく訳されたものである。」)

    Sumiko Yagawa

      ジャバウォッキ(邪婆有尾鬼)
    
    ゆうまだきらら  しなねばトオヴ
    まわるかのうち  じゃいってきりる
    いとかよわれの  おんボロゴオヴ
    ちでたるラアス  ほさめずりつつ
    
    「むすこよ  邪婆有尾鬼にゃ心ゆるすな
    あぎとも爪も  危険千万
    邪舞邪舞鳥にゆめ心ゆるすな
    いいか  たけぶる万蛇砂魑にも」
    
    息子はことしえる剣たずさえ
    万とある敵をもとめて幾年月
    たどりついたはタムタムの木陰
    しばしいこいて思いにふける
    
    うかない気分でたたずむ折しも
    かの邪婆有尾鬼がまなこらんらん
    垂る木の森をびゅるびゅると過ぎ
    さわがましくも近づいてきた
    
    えい、や! えい、やあ! これでもかとばかり
    ことしえる刃でしたたかぐさり!
    屍はおきざり首だけかかえ
    勝ちぼこりあげて息子は帰る
    
    「邪婆有尾鬼をやつけたんだと?
    でかしたぞ  来い  わがピカ天息子
    ああ愉快なる日よ  あっぱれかっぽれ!」
    父は歓喜に高笑いぶく!
    
    ゆうまだきらら  しなねばトオヴ
    まわるかのうち  じゃいってきりる
    いとかよわれの  おんボロゴオヴ
    ちでたるラアス  ほさめずりつつ
    
    Notes

    読み方(原書はルビで):

    邪婆有尾鬼
    ジャバウォッキ
    邪舞邪舞鳥
    ジャブジャブチョウ
    万蛇砂魑
    バンダスナッチ
    剣
    つるぎ
    屍
    かばね
    Credits
    • 矢川澄子(やがわ・すみこ)訳
    • ルイス・キャロル著、矢川澄子訳『鏡の国のアリス』新潮社 1991å¹´ 21-22頁

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